MUGEN CIVIC TYPE R


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K20Aエンジンのベンチテスト風景。実際のサーキット走行のログデータを元にシミュレーションして試験することもある。

Hondaのパワーブランドのジェネレーションチェンジ、すなわちK20系エンジンが初めて搭載されたのは、2000年10月に発売されたストリームである。それまでのB20系に代わり、新世代エンジンとしてHondaが投入したそれは、革新的技術といわれたVTEC機構に加え、バルブタイミングを走行状況に応じて変化させる知能化技術VTCが採用され、VTEC機構をさらに進化させたことでDOHC i-VTECと呼ばれた。現代社会の自動車エンジンに対するマスト条件でもある、燃費の向上(CO2の削減)、排気ガスのクリーン化を達成しつつ、「走る楽しさ」を融合した野心的パワーユニットである。

2001年7月、Hondaは、さらに吸排気抵抗を低減して高回転・高出力型としたスポーツエンジンK20AをインテグラTYPE Rに搭載。量産自然吸気エンジンとしては、世界最高水準の出力となる220psという高出力を達成した名機となる。

2000年×月無限エンジンベンチでは、すでにK20系エンジンが回っていた。Hondaからのレクチャーにより、K20系エンジンがB20系とは異次元のレベルで高い制御域にあるとは聞いていた。無限の開発者たちは、ベンチの計測器を前にこれが手強い“相手”であることは容易に理解できた。

エンジンベンチテストによる性能確認を行い、様々な仕様でテストを行う。グラフは標準のサイレンサーとスポーツエキゾーストシステムを比較したもの。

実際、アフターマーケットパーツの世界において、特にエンジンと制御系のパーツが極端に少ないことからも察せられるように、それまでのHondaエンジンとはレベルの異なるK20系エンジンに対してのエンジンチューニングは、極めて高度で専門的な技術力が要求されることは想像に難くない。

無限は、はじめにベースエンジンとなる当時のストリーム系に搭載されたK20系エンジンを学習した後、2001年7月の十勝24時間耐久レースへエントリーするため、インテグラTYPE Rのレーシングスペックの車両と共にそのエンジンの開発を担当。結果、見事にデビューウイン1-2フィニッシュを導くこととなった。

その後に始まったインテグラTYPE Rのワンメイクレースへのテクニカルサポートを実施しながら、米国やアジアのプロダクションレース向けに、K20Aエンジンのレーシングスペックにも磨きをかけ、さらに進化、高回転化した同ユニットから、260psという出力を発揮させることに成功した。

2007年HondaがシビックTYPE Rに搭載したK20Aエンジンは、アコードEuroR系に搭載されていたエンジンをベースに、ヘッドポートの更なる精度向上や、吸排気の見直しによる流体抵抗の低減などの技術が投入され、5ps/0.9kg-mの向上を果たしている。

たったの5psアップ。しかし自然吸気エンジンにおいて、しかもすでに限界付近にまで研ぎすまされたスペックから5psアップというのは、脅威的な数値といえる。量産エンジンとして要求される様々な要件のなかでの、パワーアップを果たした高性能エンジンを送り出したことは、Hondaだからこそなせる技といえる。

エアの流れを検証する流試ベンチテスト風景。実際の吸気レイアウトで流動効率を試験する。

グラフは標準エアボックス+標準エアフィルターとハイパフォーマンスエアクリーナー&ボックスの 吸入空気抵抗を比較したもの。約19%の吸入空気抵抗低減が認められる。

異次元の高性能を発揮するK20Aエンジンをベースにして、無限はシビックTYPE Rでどのようなアプローチを取るべきか? これまで蓄積してきたRacing K20Aエンジンの技術を投入する方法もある。確かに現在も、数種類のスペックのK20Aエンジンを並行開発している。

しかしながら、最終的に無限が選択したのは、内燃機関のスタンダードに立ち返ることだった。量産状態を入念に検討した結果、K20Aエンジン本体に手を入れる前に、まだ成すべきことがあったのだ。「よく吸い、キレイに燃焼させ、効率よく排出する」。エンジン本体に入る吸入部と排気部には、量産では成し得ていない性能アップへの鍵が残されていた。

シビックTYPE Rに搭載されるK20Aエンジンは最高の自然吸気エンジンである。だからこそ吸排気をさらに極めることで、パフォーマンスの向上を狙う。無限が提唱する具体的なチューニング方法である。いかに優れたエンジンでも量産を前提とした場合、必ずどこかに開発の制約が隠されている。その制約を無限が“解放”することで性能向上が可能となるのだ。


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