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2012.11.21

全日本フォーミュラ・ニッポン
TEAM無限 雨に翻弄されたレース。山本、佐藤それぞれのシーズンを締めくくる。

大会名:JAF Grand Prix SUPER GT & Formula NIPPON FUJI SPRINT CUP 2012
距離:4.563km×22周(100.386km)
フリー走行:11月16日(金)晴れ・観衆8,000人(主催者発表)
予選:11月17日(土)雨・観衆:19,000人(主催者発表)
決勝:11月18日(日)晴れ・観衆:41,300人(主催者発表)

 2012年フォーミュラ・ニッポンのシリーズは終わったが、シーズンの締めくくりとして特別戦JAFグランプリが静岡県富士スピードウェイで開催された。このイベントでは、SUPER GTのマシンも集めてそれぞれスプリントレースを行う特別なフォーマットが採用される。TEAM無限は、#15佐藤琢磨選手と#16山本尚貴選手2カー体制でこのレースに臨んだ。元F1ドライバーであり、インディドライバーの#15佐藤選手はTEAM無限で3戦目のレースになる。TEAM無限は、2012年度の最後となるレースでファンの応援に応えるべく、上位入賞に向け万全の体制で乗り込んだ。

●11月16日(金)
■フリー走行 1回目
#16山本 11位 / #15佐藤 16位
 16日金曜日12:00から1時間にわたり、ドライ路面でフリー走行が行われた。シーズン外の大会ということで、各ドライバーが使用できるスリックタイヤはニュータイヤ4セットのみ。そのため、セッション開始の段階から、どのドライバーもニュータイヤでコースへと入る。

 フォーミュラ・ニッポンのマシンでは初めて富士スピードウェイを走行する#15佐藤選手は、これまでのセッティングデータを基に富士に向けたセットアップを進めた。一方、#16山本選手はこれまで蓄積した富士での経験を元にセッティングを進めた。セッション終盤に2セット目のニュータイヤを用いてタイムアタックのシミュレーションが行われた。予選が行われる17日は雨が予想されていたが、決勝日の18日は再び晴れると予報されていたので、フリー走行ではドライ路面に向けたセッティングを中心に作業は進んだ。

●11月17日(土)
■公式予選
#15佐藤 6位 1分42秒129
#16山本 13位 1分44秒300

 17日土曜日は予報通り朝から雨が降り、路面は完全ウェットとなった。公式予選は10:15より、1台ずつコースインしてタイムアタックを行うスペシャルステージ方式で行われた。出走順は、2012年シリーズランキング下位の選手からとなる。#15佐藤選手は4番目、#16山本選手は8番目の出走である。
 気温9℃、路面温度9℃というコンディションでセッションは始まった。タイヤはなかなか暖まらず、コースインして2周をかけて熱を入れ、ようやくグリップが出て3LAP目のタイムアタックに間に合うという難しい状況の中、4番目に出走した#15佐藤選手は、それまでのベストタイムを1秒半上回る、1分42秒129を叩き出して首位に躍り出た。
 #16山本選手が出走する前に雨足が強まりコンディションは急激に悪化した。#16山本選手は滑りやすい路面でマシンをコントロール、果敢にタイムアタックを行ったがタイムは伸び悩み1分44秒300に終わった。
 一旦強まった雨はセッション終盤になって再び弱まり、路面コンディションが好転した。この結果全般的にラップタイムが向上したこともあり、特に#16山本選手の予選順位は相対的に低下してしまった。最終的に#15佐藤選手は6番手、#16山本選手は13番手のスタートとなった。

●11月18日(日)
■決勝
#16山本 8位(22周 32分31秒248 ベストラップ1分27秒760)
#15佐藤 13位(22周 32分43秒935 ベストラップ1分28秒307)

 富士スピードウェイの天候は前日とは一転、快晴となった。チームは前日の状況も参考にしながら、金曜日のドライコンディションで行ったフリー走行で上がった課題に対してセッティングを行った。ドライバー、エンジニアの考えを盛り込み、#15と#16ではわずかに異なる仕様にした。特別戦であるJAFグランプリでは、決勝前のフリー走行セッションは設けられず、直接決勝のスタート進行が始まる。
 決勝は22周、約100kmのスプリントレースで、タイヤ交換、給油義務はない。ウォームアップ走行の後、各車はダミーグリッドにつき、12:00、気温15℃、路面温度22℃というコンディションの中でフォーメーションラップが始まった。
 スプリントレースとあって、スタートと序盤の争いがレースの行方を決めると見られたが、前日の公式予選は天候変動のため有力選手がスターティンググリッド中盤以降に並んでおり、混戦は必至だった。そしてスタート。#15佐藤選手、#16山本選手ともにうまく加速して1コーナーに向かった。しかし#15佐藤選手は内側の選手に押し出される形になって減速、#16山本選手も1コーナーの位置取りに失敗して順位を下げてしまった。
 1周目の順位は#15佐藤選手が8番手、#16山本選手が14番手。その後#15佐藤選手は、マシンのバランスに苦しみながら走行を続け、ポジションを守ろうとしたが後方からの追い上げにあって徐々に順位を落とさざるをえなかった。一方山本選手はレース前半、前を行く#31と一進一退の戦いを続けたが、後半徐々に順位を上げ、8番手でフィニッシュした。(上位選手がレース後車検で失格となり、繰り上がった順位)


■山本尚貴選手コメント
 予選の雨は予測していましたが、僕が走るタイミングで雨量が増えてしまい、それに対処しきれませんでした。でも過去の雨のときに比べて、良くなっているポイントもありました。僕自身の雨の走りについてはまだ改善する余地があります。
 決勝のスタートは悪くなかったんですが、1コーナーの位置取りが悪くて最後尾近くまで順位を落としてしまいました。予選の段階では決勝も厳しいだろうなと思ったんですが、走り出したらバランスのレベルが上がっていたので、序盤こそ苦戦しましたが中盤以降大分盛り返してトップグループとほぼ同じペースで走れました。
 TEAM無限に来てから2年の中では一番手応えを感じてレースを終えることができました。ポジションは8位でしたがそれ以上に得るものがあったと思います。前にいるクルマとバトルして抜いてポジションを上げられたので楽しいレースでした。

■佐藤琢磨選手コメント
 予選はチャレンジングなコンディションになりましたが、あの状況では悪くないタイムが出せたと思います。スタート直後の1コーナーではアウト側からアプローチし、スリーワイドのままオーバーテイクを試みましたが、内側のクルマに押し出されてしまい、順位を落としてしまいました。
 その後はとにかくバランスに苦しみました。金曜日の課題を克服すべく、エンジニアと共にセッティングを煮詰めたつもりでしたが、レースではリヤのスタビリティ不足に苦しみ、全く踏んでいけない状態になってしまいました。このクルマが持つデリケートなセットアップの特性が裏目に出てしまった形です。何度かサイドバイサイドの場面がありレースを楽しみましたが、残念ながら順位を上げることはできませんでした。
 TEAM無限で戦った3戦、僕自身はとてもレースを楽しみました。新しいチャレンジで良い勉強にもなりましたし刺激にもなりました。僕としては、いろいろなことをトライしたつもりです。ある意味冒険もして、うまくまとまらなかったことも多かったのですが、そのことも含めて意味のあるデータを残す事ことができましたし、少しずつ結果に結びついていったと思います。
 もちろんもっと前を走るレースをしたかったですが、TEAM無限のスタッフのみなさんと一丸となってレースに取り組み、とても有意義な時間を送ることができました。また、ファンの皆さんにもたくさんの声援をいただいて走れたことはとても嬉しく思っています。たくさんの応援を本当にありがとうございました。

■手塚監督コメント
 公式予選の山本選手は、ちょうど雨が強くなったときのアタックになってしまったので不運でした。でも決勝ではクルマのバランスも修正できましたし、本人もセクター2と3で走り方を使い分けたりして、中盤から後半にかけてラップタイムが上がっていって良い走りをしました。順位は8位でしたが、予選順位を考えれば良かったのではないでしょうか。#15と#16では少し違う仕様で走らせたんですが、山本選手の仕様の方が合っていたようですね。この状況についてはチームに帰って解析し今後につなげようと思います。今後富士のセットアップに向けて明るい兆しが見えたような気がします。
 佐藤選手は苦しいレースになってしまいました。でもこの3戦、佐藤選手を迎えて2台体制にしたことによって、状況が変わったと思います。ただ単に2台体制が良かったというのではなく、佐藤選手という経験豊富な素晴らしい選手の経験に基づいたクルマの作り方、セットアップの仕方をエンジニアも学んで、良い方向性が作れたのだと考えています。こうした蓄積を、将来のレースにつなげていきたいですね。TEAM無限の応援を引き続きお願いします。

■勝間田エントラント代表コメント
 天候に左右された残念なレースになってしまいました。本当はもっと上へ行けるつもりでいたのですが、セッティングがうまく当たりませんでした。でも山本選手はスタート位置が悪かったけれども良いところまで追い上げていいレースをしたと思います。佐藤選手は残念でしたが、大変意味のあるデータをもらうことができました。佐藤選手を迎えたことは、チームにとって大きな意味があり、経験豊富な佐藤選手の車に対する的確なコメントが得られたこと、また2台体制になってから、セッティングに於けるトライの幅が増えたことなど、多くのメリットがありました。今後はこれら貴重なデータをもとに、更なる上を目指したいと思います。
 今年一年、応援していただいたスポンサーの皆様、ファンの皆様に対して大変感謝しております、ありがとうございました。