2013 ASIAN LE MANS SERIES ROUND 2

2013年9月24日

「MUGEN CR-Z GT」
念願の初優勝を
ポールトゥウィンで飾る!

シリーズ名:2013 ASIAN LE MANS SERIES ROUND 2
大会名:3 HOURS OF FUJI
距離:4.563km×3時間
予選:9月21日(土) 晴れ・観衆:5,800人(主催者発表)
決勝:9月22日(日) 晴れ・観衆:7,800人(主催者発表)

 #16 MUGEN CR-Z GT(武藤英紀/中山友貴組)は、9月20日〜22日に富士スピードウェイ(静岡県)で開催されたASIAN LE MANSシリーズ第2戦にSGTクラスで出場した。

 ASIAN LE MANSシリーズは、ル・マン24時間レースを戦うレース車両のカテゴリーの中から、プロトタイプカー(LMP2/LMPC)やGTカー(LM GTE/GTC)が参加して競うレースで、韓国・インジェサーキットで8月に開幕、今回はシリーズ第2戦に当たる。この後、10月に中国・珠海サーキット、12月にマレーシア・セパンサーキットを転戦する。

 今回TEAM無限は、SGTクラスとして特別参加した。特別参加に当たっては、SUPER GTシリーズで成績に応じて課せられているウェイトハンディ(前戦では100kg)をすべて下せるが、シリーズの性能調整で科せられている吸気リストリクター径や第5戦から課せられた車高8mm増加ハンディはそのままという条件となる。

 また、ASIAN LE MANSシリーズでは、給油リグの流量リストリクターが取り外せるため給油時間が短縮するほか、ピット作業時のタイヤ交換については、使用できるインパクトレンチは1個のみ、作業員は2名に限定されるなど、SUPER GTシリーズとは若干異なる競技規則が適用される。

 チームは、週初めにツインリンクもてぎで行われたSUPER GTシリーズ合同テストに参加、1日目の月曜日こそ台風で中止されたが、2日目の火曜日には今回のレースも想定してウェイトを下ろした状態でのテストを行い、車両の状況を確認した。車両からは、夏を過ぎ気温が低下したことを受けて、エアコンシステムが取り外されている。

9月20日(金)

フリープラクティス1:4位(ベストタイム:1分39秒256)

  レースウィークに先駆けて、フリープラクティス1が午後1時から行われた。チームはフリープラクティス1を武藤選手、フリープラクティス2を中山選手に任せる予定で、まず武藤選手が走り出した。武藤選手は24周を周回してマシンの状況を確かめた。ウェイトを下ろして身軽になった分、立ち上がりでの加速性能は向上したが、同様に向上すると思われたブレーキング性能は、車高増加の影響が出て空力性能が低下し挙動が安定しない傾向が認められた。チームはセッティングを改めて見直したが完全な解決には至らなかった。

9月21日(土)

フリープラクティス2:5位(ベストタイム:1分39秒117)

 秋晴れとなった富士スピードウェイで、午前10時15分から1時間にわたって2回目のフリープラクティスが行われた。当初は中山選手が走り込みを行う予定だったが、予選に向けてセッティングに課題が残っていたため武藤選手が14周、中山選手が10周を走行した。ここでもチームは車高を上げた影響を打ち消すセッティングを探ったが、タイムはSGTクラス出走10台中5位のタイムにとどまった。

公式予選:1位(ベストタイム:1分38秒241)

 SUPER GTシリーズと異なり、ASIAN LE MANSシリーズでは、スターティンググリッドは、全マシンが参加する30分間の予選セッションで記録したそれぞれのベストタイム順で決まる。

 チームはタイムアタッカーとして武藤選手にステアリングを託し、午後1時55分からの予選セッションに臨んだ。セッティングは、午前中のフリープラクティスを通して中山選手が提案した方向でまとめられた。

 気温は27度、武藤選手はコックピットについたままピット前で待機し、コースオープンから10分が経過したときエンジンを始動してコースインした。武藤選手は2周かけてタイヤを十分ウォームアップし、3周目にタイムアタックにかかった。ラップタイムは午前中のタイムを大幅に上回る1分38秒362。これでトップにつけた。

 武藤選手は一旦タイヤを冷やしハイブリッドシステムに充電を行うと、2回目のタイムアタックを行い、ラップタイムをさらに1分38秒241へと短縮した。この結果、#16 MUGEN CR-Z GTはトップで公式予選を終えた。

9月22日(日)

決勝:1位(106周 3時間2分8秒703 ベストタイム:1分39秒598)

 SUPER GTシリーズでは午前中にウォームアップ走行のセッションが設けられるが、ASIAN LE MANSシリーズでは決勝スタートまでは走行の機会はなく、最終的な決勝セッティングを確かめることなく午後2時のスタート時刻を迎えた。

 午後2時、ポールポジションについた#16 MUGEN CR-Z GTのスタートは武藤選手が務めた。ローリングスタートからレースは始まった。武藤選手は前に並んだ上位クラスの2台とは間隔を開いて後方集団の最前列からスタート加速、トップの座を守ったままレースを始めた。

 武藤選手は後方との間隔を約1秒に保ってトップを走り続けた。28周目には武藤選手を追っていた後続車が周回遅れの車両を避ける際に遅れたため、#16 MUGEN CR-Z GTと後続車との間隔は7秒にまで広がり、武藤選手の戦いは楽になった。

 武藤選手はスタートから1時間を過ぎた午後3時過ぎ、37周を走り終えてピットイン、給油、4輪のタイヤ交換、ドライバー交代を行った。#16 MUGEN CR-Z GTには中山選手が乗り込んでコースへ復帰した。復帰直後、38周目の順位は2番手であった。

 #16 MUGEN CR-Z GTの前を走る52号車は最初のスティントを引っ張っていたが、15時18分、47周を走ってピットインした。この間に中山選手は52号車をかわし、トップの座を奪回した。この時点で後続車との間隔は10秒弱あった。

 中山選手の背後にいた11号車は中山選手を上回るペースで間隔を徐々に縮め始めた。レースがスタートして1時間45分経過した午後3時45分、#16 MUGEN CR-Z GT が62周を走り終えた段階で、その差は5秒強に縮まり、70周目にはさらに間隔は3秒強となった。しかしここで中山選手はペースを上げ、タイム差はこれ以上縮まらず、こう着状態でレースは続いた。

 ASIAN LE MANSシリーズではコース上で接触してボディを破損した場合、ピットで原状まで修復しなければレース復帰を許さないという規則がある。チームは、接触でのロスタイムを避けるため、ラップタイムが悪化してでも極力慎重に走るようドライバーに指示を出していた。中山選手は、いざとなればペースを上げることができることを確認しながら指示通り走り、トップの座を守った。レースがスタートして2時間をすぎた73周目、後続の11号車が2度目の給油ピットイン。中山選手は37周を走って次の周にピットインした。

 給油とタイヤ交換を終え、武藤選手がコックピットに収まってコースへ復帰した。#16 MUGEN CR-Z GTが75周を終えたときの順位はトップで、後続の11号車との間隔は7秒差となっていた。

 ところが武藤選手のペースが上がらず、後続の11号車が追い上げて間隔を詰めてきた。日没が早まり太陽が傾いた影響もあって路面温度が低下し、交換したタイヤの内圧がなかなか上がらずグリップが十分に生じなかったからだ。しかし80周をすぎる頃にはタイヤが本来の性能を発揮し始め、武藤選手もペースを上げて4秒まで縮まった間隔はそれ以上動かなくなった。

 ここで武藤選手はさらにペースを上げ、それまでのベストラップである1分39秒598を記録して後方を突き放しにかかった。後続車とのペースは徐々に広がり始めた。3時間レースも残り30分、87周を消化した段階で後続車との間隔は8秒にまで広がっていた。武藤選手はそのままのペースを守って残りのレースを走りきり、トップでチェッカーフラッグを受けた。またこれは、昨シーズン途中に実戦デビューした#16 MUGEN CR-Z GTにとって、初めての優勝でもあった。

 この結果、TEAM無限は、チームポイント8点(優勝)のチームランキングポイントを加算して総計86点とし、2番手との差を20点に広げてシリーズランキングトップを守った。武藤/中山組は8点(優勝)のドライバーランキングポイントを加算してポイント総計を68点とし、2番手との差を16点に広げ、同じくシリーズランキングトップを守った。(ポイントはASIAN LE MANSシリーズ特別設定)

武藤英紀選手コメント

去年7月から始めたプロジェクトですが、ここまで正直長かったですね。レースでは、スタートに集中して後とのギャップを出来るだけ早く築きたいと思っていました。2回目のスティントでは、当初タイヤの内圧が上がりきらずペースが悪くて追いつかれてしまうかなとも思ったのですが、ここで無理しても意味がないなと落ち着いて、内圧が上がるのを待ってプッシュしたら間隔が縮まらなくなりました。

もちろん不安でしたが、精神戦みたいな状況だったので、ここで突き放そうと敢えてプッシュしたら間隔が開いていきました。内圧が上がってからは思った以上に調子が良くて、そこからは周回遅れだけに気をつけてプッシュできました。でも正直なところ、最終ラップに入って、何か起きるんじゃないだろうかと悪いことを考えました。

今までが今まででしたからね。勝てるレースがいっぱいあったのに、今年は3回も2位で終わっているので、もう勝てないのかなと心配していました。今回は優勝できて本当に良かったけれど、何よりその悪い流れから抜け出せたということに大きな意味があるように思いますね。3時間走って勝てて、シリーズポイントも重ねられて、本当にたくさんの成果を得たレースでした。

中山友貴選手コメント

クルマが速いことは分かっていましたから、自分たちが持っている力を発揮しきれれば勝てると信じていました。練習中は、ウェイトを下ろして軽くなったのに、車高ハンディのせいでブレーキングの挙動が良くなくて、それが解決できれば大幅にタイムアップできそうだと思っていました。それでフリープラクティスで走って、いろいろ確認したんですが、何通りか試したうちに良いと思われるセットがあったので、それを武藤さんとも話して予選で投入しました。

レースでは、いつものGTシリーズと違って、走る相手が違うので、追い抜き時に相手がどういう風に動くのかを見極めながら走る必要がありました。接触するくらいなら1秒、2秒遅れてもいいから完全な形で走りきることが、僕にとっての最大のミッションでした。ピットアウトした時点で10秒以上のマージンがあったので、それをゼロにしないようにちゃんとコントロールして走ろうと思っていました。プッシュすれば40秒前半でも走れたので不安はありませんでした。

ミスなくしっかり仕事をこなせたかなと思います。すべてが噛み合った結果で嬉しいです。予選に貢献できたことも良かったです。シリーズを考えても、ここで優勝できたのは大きいですね。

熊倉淳一監督コメント

これまで何度も優勝する機会はあったにもかかわらず些細な問題で優勝を逃してきましたが、ASIAN LE MANSという日本で初めて開催される特別な大会でポールポジションからスタートし優勝できて光栄です。予選ではハイブリッドシステムも完璧に使えて、予選セットも決まって、完璧でした。

ただ、富士での決勝レースでは、ストレートスピードがGT3勢に比べると遅いので、今日はできるだけ前からスタートして、周囲のクルマに飲み込まれないようにと考えていました。いつものGTと違って決勝セットの最終確認が出来ない中でレースを迎えて、一抹の不安はありましたが、これまでの富士での経験をベースにセットしてスタートしました。

ドライバーには、「技量の分からない選手も多いので接触に注意して走るように」と指示しました。そのせいでラップタイムのばらつきも出ましたが、無事チェッカーまで持ってきてくれたので優勝できたと思っています。チェッカーを受けるまでは緊張して見守っていました。100点満点のレースでした。これを機会にシリーズチャンピオンを目指して頑張ります。