Rd.3 MALAYSIA

2013年6月18日

「MUGEN CR-Z GT」
2戦連続で2位表彰台獲得し、
シリーズランキング2位を堅持!

シリーズ名:2013 AUTOBACS SUPER GT SERIES ROUND 3
大会名:SUPER GT INTERNATIONAL SERIES MALAYSIA
距離:5.543km×54周(299.32km)
予選:6月15日(土)曇り・観衆:41,000人(主催者発表)
決勝:6月16日(日)曇り・観衆:67,000人(主催者発表)

 #16 MUGEN CR-Z GT(武藤英紀/中山友貴組)は、6月15日〜16日にセパン・インターナショナル・サーキット(マレーシア)で開催されたSUPER GTシリーズ第3戦に出場した。

 昨シーズン途中からシリーズに参戦した#16 MUGEN CR-Z GTにとって、セパン・インターナショナル・サーキットでの走行は初めての経験である。セッティングについて既存データが手元に無いため、これまで国内サーキットで蓄積したデータを基に、路面ミューが低いことを想定して補正を加え持ち込みセッティングが決められた。

 熱帯にあるセパン・インターナショナル・サーキットでは例年高気温下でレースが行われ、レーシングカー、ドライバーとも冷却対策が大きな課題となる。これについては、昨年夏に開催された鈴鹿1000kmを完走した経験から特別な対策は不要と判断、昨年の夏に準じた冷却ダクトの追加を行った。また、新たに用意したカナードをフロントフェンダーに装着した。

 今回、#16 MUGEN CR-Z GTには38kgのウェイトハンディが課せられる。さらに、クールスーツ用システムを搭載するため、前回のレースに比較して50kg近い重量増となる。マシンのバランスも変わり、決勝ではタイヤに対する負荷の増加も予想された。

6月15日(土)

公式練習:13位(ベストタイム:2分06秒758)

 セパン・インターナショナル・サーキットは、薄曇りで時々太陽が照りつける天候。公式練習が始まる午後1時には、気温が摂氏32度、湿度は51%に達した。#16 MUGEN CR-Z GTには、まず武藤選手が乗り込み、タイヤの確認、ハイブリッドシステムの確認、セッティングの確認を行った。武藤選手は予定通りピットインを繰り返しながら約30分間を走行し中山選手にマシンを引き継いだ。この時点でタイムは2分06秒758、クラス11番手につけた。

 中山選手も予定通り各種チェックを行いながら周回、30分を走行して再び武藤選手にマシンを引き継いだ。武藤選手は再び30分間を走行、その後中山選手が残りの時間を走行して公式練習を終えた。最終的に順位は13番手となった。

公式予選:2位(Q1:2位・Q2:2位)

 スターティンググリッドは、全マシンが参加するQ1と、Q1の上位13台のみが出走できるQ2の、2段階制ノックアウト方式で決まる。

 チームはQ1に中山選手、Q2に武藤選手という組み合わせで公式予選に臨んだ。セッションは通常のそれぞれ15分間ではなく、Q1が15分、Q2が12分というタイムテーブルで行われた。16時30分、Q1セッション開始時点の気温は摂氏32度、湿度は50%と公式練習から変化はないが、太陽が薄い雲で陰ったためか、路面温度は摂氏5度近く低下し、タイムアタックの条件は好転した。

 中山選手は先頭でコースイン、2ラップをかけてタイヤを暖めると3周目にアタックし、2分04秒229を記録してクラス首位に立った。公式練習よりも2秒5速い好タイムである。その後1周してピットイン。#55 ARTA CR-Z GTが中山選手のタイムを上回ったため、#16 MUGEN CR-Z GTは、2番手でQ1を通過した。

 武藤選手も、Q2セッションが始まると先頭でコースイン、2周かけてタイヤを暖め、タイムアタックを行った。記録は2分03秒795。これで#16 MUGEN CR-Z GTは首位に立ったが、Q1同様、#55 ARTA CR-Z GTがそのタイムを上回ったため、順位は2番手へ後退した。

 武藤選手は走行を続け1周を置いて2周目に再びタイムアタック、タイムを2分03秒374と短縮するが首位には届かず、Q2セッションは終了し、#16 MUGEN CR-Z GTは予選2番手、フロントローを獲得した。

6月16日(日)

フリー走行 7位

 セパン・インターナショナル・サーキットの上空は晴れ、強い日光がコースに照りつける。決勝前ウォームアップが行われる午前11時には気温は摂氏32度、路面温度は摂氏42度に達した。セッションではまず武藤選手がコックピットに収まり15分間走行した。タイムは2分06秒937。この時点で4番手である。

その後中山選手がステアリングを握り15分間走行したが、ラップタイムの更新はならなかった。フリー走行セッションが終了した後、サーキット・サファリ・セッションが始まった。ここでも武藤選手、中山選手の順で走行を行った。武藤選手と中山選手の交代時には、決勝中ピットストップを想定した練習が行われた。このセッションで中山選手は自己ベストの2分07秒360を記録した。

決勝:2位(51周 1時間51分10秒193 ベストタイム:2分06秒764)

 決勝レーススタートは午後4時。セパン・インターナショナル・サーキットの上空は薄曇りの状況となったが、気温は摂氏32度と変わらず、路面温度はむしろ上昇の気配を示していた。

スタートは武藤選手が務めた。スタート合図とともにフロントローからスタートした武藤選手は、ポールポジションの#55 ARTA CR-Z GTの背後にぴたりとつけ、なんとか前へ出ようとスキを探った。オープニングラップを終えてメインストレートへ帰ってきた武藤選手は前のマシンに触れ合うばかりに接近して攻めるが、追い越しには至らない。

2台のCR-Z GTは、3番手以下の後続をじりじりと引き離しながらテールトゥノーズのトップ争いを繰り広げる。4周を終えた時点で首位の#55 ARTA CR-Z GTと2番手の#16 MUGEN CR-Z GTとの差は0.5秒、#16 MUGEN CR-Z GTと3番手のマシンとの差は2秒以上に広がっていた。

#16 MUGEN CR-Z GTは、前を行く#55 ARTA CR-Z GTに対し、ウェイトハンディ38kg分、車両重量が重い。武藤選手は加速時にその分のもたつきを感じたが、無理をすれば今度はその車両重量がタイヤに負荷をかけ消耗を早めることになる。タイヤをいたわりながら武藤選手は先頭車両を追った。後方車両との間隔は開いていったが、先頭車両との間隔もまた、徐々に開き始めた。

不運なことにスタート後10周を過ぎる頃、クールスーツが不調となったため、武藤選手は高温にさらされることになった。走行中の熱中症はセパン・インターナショナル・サーキットでのレースでは往々にして発生する大問題だ。武藤選手とチームは、相談の上で当初の予定を早め、22周を走り終えたところでピットイン、ドライバー交代を行うことに決めた。

中山選手は、コックピットに収まり、チームは予定通り後輪2輪のみを交換、給油を行って中山選手をコースへ送り出した。先頭を走る#55 ARTA CR-Z GTは23周を終えてピットイン、作業を行ってコースに復帰したが、#16 MUGEN CR-Z GTはそれより早く24周目の第1コーナーへ飛び込み、順位を入れ替えた。これにより#16 MUGEN CR-Z GTは事実上の首位に躍り出た。

29周目にはその他の車両もピット作業を行ったため、#16 MUGEN CR-Z GTは見かけ上でも首位となった。この時点で2番手の#55 ARTA CR-Z GTとの間隔は3秒、3番手の車両はさらにその20秒後方へと退いていた。

中山選手は、武藤選手からのインフォメーションを受けて、予定より長くなった担当走行の間、リヤタイヤの消耗抑制を心がけながら走行をした。しかしGT500クラスを先行させる際のロスタイムなどがあって40周前から#55 ARTA CR-Z GTの接近を許してしまった。中山選手はなんとか押さえ込もうとするが、車両重量の差はいかんともしがたく、40周を終えるメインストレートでスリップストリームに入られると、第1コーナーでイン側から順位を入れ替えられてしまった。

その後、首位との間隔は徐々に開いた。中山選手は、無理をせずレースを走りきることに意識を切り替え、集中して周回を重ねて29周を走りきり、2秒差で2位のチェッカーフラッグを受けた。

第2戦に続き2位でレースを終えたTEAM無限は、チームポイント15点(2位)、走行ラップポイント3点(首位と同一周回)合計18点のチームランキングポイントを加算してポイント総計を43点とし、首位と2点差、3番手とは14点差でシリーズランキング2番手の座を守った。武藤/中山は15点(2位)のドライバーランキングポイントを獲得し、ポイント総計を34点とし、首位とは2点差、3番手とは12点差のシリーズランキング2番手へ浮上した。

武藤英紀選手コメント

クールスーツを入れると、前回の富士より50kgくらい重くなったので、土曜の練習走行では、クルマのバランスに問題がありました。走り出したときは、重い、と思いました。でもチームが予選までにクルマを仕上げてくれたので、状況がかなり良くなって、大幅にタイムアップできました。

ただ、重いのは変わらないので、決勝でのタイヤのライフを考えると、序盤からガンガン飛ばすことはできないなと思っていたんです。でも序盤は、結構熱い戦いをしてしまいましたね。タイヤ的に重さの分、マージンがないと思っていたので、序盤のうちに仕掛けることにしたんです。それに、同じHondaだからといって、譲り合うようなレースをするわけにはいきませんから。

10周すぎからクールスーツがほとんど働かなくなってしまい、足の感覚がおかしくなって、タイヤのことよりも暑さの方が気になり始めました。それがなければもう少し元気な走りができたかもしれないので、自分としては大きな反省点です。

CR-Zが早く勝つことを願っていたので、僕らが勝ったのではないけれどもHondaのCR-Zが1-2を飾ることができたことは非常に望ましい結果だったと思います。僕らの方が先に戦い始めて開発をずっとやってきたので、本心では先に勝ちたかったけれど、2位のポイントも悪くはないし、シーズンを考えるとチャンピオンを見据えてよい結果だったでしょう。この重さで2位に入賞できたことには非常に大きな意味があると思います。第4戦では、さらに重くなってしまうので、ポイントをしっかり取りにいきます。そこで耐えて、鈴鹿とツインリンクもてぎではよい結果を出します。

中山友貴選手コメント

CR-Zとしては初めて走るサーキットで、どうなるか想像ができませんでした。CR-Zはサーキットに合っているだろうとは思ったんですが、走り始めたらやはり重く感じる一方、周囲が速いので、あれ? と。でもコンディションが合えばタイムも上がるクルマで、予選ではその性格が出てくれました。結局は、相性は良かったんだと思います。

予選では、武藤さんがいい状態のときに走っている状況をロガーで見てイメージして走ったら、思った以上にコンディションにも合って、フィーリングも良く走れました。細かいミスもあったけどきちんとQ2につなぐことができたので、ポールが取れなかったのは残念ですが、良い形で終われました。

ただ、決勝レースは抜かれて負けたのが悔しいです。今回のレースに向けてチームと話し合ってきたのは、無理をせずに走り出したポジションでしっかりポイントを持って帰るということで、「絶対に勝て」ではなかったんです。でも勝てそうな雰囲気も出てきて、作戦面もうまく機能してピットアウトして随分前に出られたのに、最終的に抜かれてしまいました。

武藤さんの話を聞くと、リヤタイヤ(の消耗)が厳しいということで、予定より長く僕が走ることになってしまったこともあって、余計その消耗を気にしなくてはいけませんでした。ピットアウトした時点ではマージンがある分、うまくタイヤをいたわって走っていたつもりですが、徐々に詰められて、最終的には周回遅れのときに後につかれてスリップに入られてしまいました。

シリーズを考えれば2位で終わったことには大きな意味があると思います。これからウェイトハンディが増えて重くなってしまうので勝つことは難しくなるかもしれないけど、粘り強く戦って、ウェイトが減ったオートポリス、ツインリンクもてぎではまた速さを取り戻せると思います。個人的には1000kmの鈴鹿は好きなサーキットだしロングレースなので、上の方へ行きたいです。この悔しさをレースで返したいと思います。

熊倉淳一監督コメント

予選では思ったより良いタイムが出ました。練習走行のデータを基に予選のセッティングを決めたら、うまく当たったという感じです。当初は、ほかのクルマと比べてここまで走れるとは思っていませんでしたから、期待以上の結果だと言えます。ドライバーは2人ともミスなく走ってくれました。同じCR-Z GTにポールポジションを取られてしまいましたが、車両重量10kg毎に0.1秒ラップタイムが低下するという法則に当てはまる結果だと言えるかもしれません。

決勝ではこの重さが効いて、下手をするとタイヤに負担をかけることが予想されました。当初からフロントタイヤは無交換でいくつもりでしたから、ドライバーには無理しないようにと言って決勝レースへ送り出しましたが、うまくタイヤに負担をかけないような走り方をしてくれ、予定していた通りのペースでレースができました。

ただ、クールスーツのトラブルがあって、武藤選手が乗っているときに予定よりも早くピットにいれなければならなくなったのだけが予定外ではありました。この問題については、帰国してから精査して夏場のレースに備えます。中山選手は、そんな状況でもきちんとタイムを刻んでくれたので、予選と同じ順位でフィニッシュできました。

ピット作業で前にでられたのは、スタッフがパーフェクトな作業をしてくれた結果です。クルマの信頼性については十分確認できました。高気温なのでハイブリッドシステムのアシスト量を減らさなくてはなりませんが、それでも効果を発揮できて得られた戦果だと思っています。でも、勝てそうで勝てませんね。第4戦からはさらにウェイトハンディが増えてしまいますが、重量なりに戦って確実にポイントを取っていきます。
ファンの皆様、ご声援ありがとうございました。