Rd.7 AUTOPOLIS

2013年10月9日

「MUGEN CR-Z GT」
手堅くポイントを積み重ね、
ランキングトップのまま最終戦へ!

シリーズ名:2013 AUTOBACS SUPER GT SERIES ROUND 7
大会名:SUPER GT IN KYUSHU 300KM
距離:4.674km×65周(303.81km)
予選:10月5日(土) 雨・観衆:11,600人(主催者発表)
決勝:10月6日(日) 曇り・観衆:22,100人(主催者発表)

 #16 MUGEN CR-Z GT(武藤英紀/中山友貴組)は、10月5日〜6日にオートポリス(大分県)で開催されたSUPER GTシリーズ第7戦に出場した。9月22日に開催されたASIAN LE MANS SERIESに参加した#16 MUGEN CR-Z GTは、SGTクラスで優勝を遂げ、SUPER GTシリーズポイントの付与を受けて、ポイントランキングトップのままこのレースを迎えた。

 前回シリーズ第6戦の富士では、ウェイトハンディが累積計算上114kg(規則上の積載上限は100kg)となっていたが、今回のレースでは前戦までに獲得したシリーズ得点の累計1ポイントを1kgに換算したハンディ・ウエイト68kgとなった。一方、GTアソシエイションは9月26日付けでGT300クラスの参加条件改定についてブルテンを発行し、#16 MUGEN CR-Z GTについては、シリーズ第4戦で30.0mm×2から29.1mm×2へと縮小されたリストリクタ径をさらに28.5mm×2へと絞り込むと決めた。チームは目前に迫ったレースウィークに向けて対応を迫られた。

10月5日(土)

公式練習:15位(ベストタイム:2分04秒417)

 台風の影響でオートポリスには朝から雨が降り、気温も上がらない中、練習走行は午前9時から2時間の予定で始まった。路面はヘビーウェット、路面温度は17度、雨足は徐々に強まるというコンディションである。

 #16 MUGEN CR-Z GTは、まず武藤選手がコックピットに収まり走行を開始するが、ほどなくコース上で発生したアクシデントでセッションは赤旗中断。赤旗中断の間にも雨足は強まりコンディションはさらに悪化する。

 セッションは午前9時22分に再開された。雨量はわずかに少なくなり路面コンディションも好転するが、今度は霧が発生して視界も遮られるようになったため、9時48分にコースの視界不良により赤旗が提示されてセッションは再び中断された。結局その後コンディションの好転はなく、午前11時、セッションは赤旗のまま終了した。

 結局、武藤選手は4周を走行し2分04秒417を記録するにとどまり、中山選手は走行する機会を得られなかった。このレースで絞り込まれたリストリクタは、前日、完成してきたので事前に台上試験する時間もなかったため、本来はこの公式練習で評価を行わなければならなかったが、セッティングを含め確認ができないまま公式予選を迎えることとなった。

10月6日(日)

公式予選:16位(ベストタイム:1分49秒620)

 前日悪天候により公式予選セッションがキャンセルされたため、スケジュールが変更されて公式予選セッションは日曜日朝9時から25分間の走行セッションを設け、そこで記録されたタイム順でスターティンググリッドを決定するという変則的な形式で行われることになった。雨は上がりコースは乾き始めていたが、ところどころには濡れたセクションも残っているという難しいコンディションである。

 前日走り込みのできなかった#16 MUGEN CR-Z GTは、武藤選手をコックピットに送り込みドライタイヤを装着して、セッティングを確かめながらタイムアタックを行うことになった。リストリクタを絞り込まれた影響、車高を上げた影響、タイヤの状況など、確認しなければならない項目は多く、武藤選手はセッション開始後17分でピットに戻り、タイムアタックに臨んだが、タイムは伸び悩んだ。結局武藤選手は13周を走行し#16 MUGEN CR-Z GTのタイムは1分49秒620、順位は出走24台中16位に終わった。

決勝:9位(60周 1時間55分09秒235 ベストタイム:1分49秒901)

 通常のスケジュールでは決勝レース前にフリー走行セッションが設けられるが、悪天候によるタイムスケジュール変更の結果、午後2時から決勝レースがそのままスタートすることになった。
 天候は曇り。雨は上がりコースはドライコンディションだが上空の雲の動きは速く、いつ雨が降り出すかわからないという状況でレースが始まった。スタートは武藤選手が務め、16番手のポジションからクリーンスタートを切った。しかし、路面が冷えていたこともありレースを考慮して選択したタイヤの暖まりが遅れ、周囲の他銘柄タイヤを装着した車両の先行を許して1周目に順位は19番手に下がった。

 その後#16 MUGEN CR-Z GTは本来のペースを取り戻し、上位車両同等のラップタイムで走るが、集団の中に取り込まれると順位を入れ替えることはなかなかできない。というのも、コース上にタイヤカスが散らばり、本来の走行ラインを外れて走行するとタイヤカスを拾ってグリップが下がり、ペースが落ちるという事情があったからだ。

 ドライバー交代のためのピットインについては、各チームで戦略は二分した。早めにピットインして後半を引っぱるチームに対し、TEAM無限は前半を引っぱりレース中盤での交代という戦略を選んだ。天候が悪化する気配を見せ小雨も降り出していたので、コンディション次第ではタイヤを選択する必要があったからだ。上位を走っているチームの何台かがピットインする一方、武藤選手は本来のペースを取り戻し23周目、24周目、25周目とそれまでの自身ベストラップを更新しながら走行を続け、見かけ上の順位を10番手まで上げて32周を走り終えピットインした。

 交代した中山選手はコースへ復帰、33周目は16番手でストレートを走り抜けた。タイヤが暖まるのを待った中山選手は34周目には#16 MUGEN CR-Z GTにとってベストラップタイムとなる1分50秒024を記録、さらに36周目には1分49秒901で走って、他車のピットインもあり37周目に順位を12番手にまで上げた。

 40周目、コース上での混乱に乗じて前方の車両を2台追い抜いた中山選手は10番手に順位を上げ、その後、抜きつ抜かれつの激戦となったが、最終的に9位まで順位を上げて60周を走りきり、チェッカーフラッグを受けた。

 この結果、TEAM無限は、チームポイント3点(9位+2周遅れ完走ポイント)のチームランキングポイントを加算、89点とし2番手と12点差でシリーズランキングトップを守った。一方、武藤/中山組は2点(9位)のドライバーランキングポイントを獲得し、ポイント総計を70点とし、2番手と8点差でシリーズランキングトップを守った。次戦はツインリンクもてぎで開催されるシリーズ最終戦である。

武藤英紀選手コメント

急に決まったリストリクタのサイズの影響が大きくて、予選では見事に下位に沈みました。決勝の序盤は、周囲の他のタイヤを履いている人のウォームアップが非常に早くて、僕達はレースを想定した硬めのタイヤだったので、序盤は全然ついていけませんでした。そこからタイヤカスの問題もありました。

単独で前に誰もいなければそれなりに踏んでいけるのでスピードも乗りやすいけれど、レースシチュエーションになると勝負がかけられなくなるんです。ストレートで抜きたくても(リストリクタのせいで)遅くてスピードが乗らなくて抜けないので(コーナーで速い)CR-Zの良さを活かせませんでした。このままでは、最終戦でウェイトが軽くなっても、車高を上げられているし、最低リストリクタは戻してもらわなければ戦うのは厳しい状況ですね。

ピットストップのタイミングは、結果論ですがもう少し早いほうが良かったと思います。現にピットストップの間に55号車に抜かれてしまいましたから。でも雨も降り始めていたので、また雨が強くなってレインタイヤに交換し直すことは避けたかった。そんな中で最終戦に向けてポイントが取れたのは、タナボタみたいな面もありますが本当に良かったです。

中山友貴選手コメント

レースでは気温が上がるだろうという見込みもあったので、硬めのタイヤをチョイスして行きました。でも気温は上がらず、走り出しでは若干ウォームアップに苦労することになり、そこでライバルと差が開いてしまった感じですね。僕のスティントでも、アウトラップで熱の入りが悪かったんですけど1周走ってくるとしっかり暖まって、ベストタイムを出せました。とにかく最後までひとつでも順位が上がればと思って走っていました。

でも苦しいレースでした。リストリクタの影響でストレートスピードが明らかに伸びない。FIA-GT3と戦うためにはコーナーの進入で前に出たいんだけど、ストレート区間で離されてしまうので、ドアをこじ開けるチャンスがないという感じが続きました。

最初、同じJAF-GTの55号車と61号車が前にいて、1周のうちに2回くらい順位を入れ替えながら走っていました。走行ラインを少しでもずらすとタイヤカスを拾ってタイヤが本来のパフォーマンスを発揮しなくなり、その後の2周くらいはマシンのバランスが悪化するという状況で、この3台でバトルしているとき周回遅れを抜こうとするとタイヤカスを拾って後のライバルに抜き返されて、という繰り返しでした。

61号車は前に見える位置にいたので、何とかその前でフィニッシュしたかったです。ファイナルラップで55号車と接触する形になったのは残念ですが、でもスタート位置と序盤の流れを考えれば、最終的にポイントが取れたので、良かったと思います。

熊倉淳一監督コメント

レースの前の週にGTアソシエイションから急遽リストリクタダウンについて通達がありました。それに対応するためには、新たにリストリクタを作らなくてはならなくなりました。材料から準備しなくてはならなく、本来とても間に合わないタイミングでした。規則上、リストリクタをダウンさせないでウェイトを50kg増やすという選択もあったんですが、今回のウェイトハンディは68kg、これに50kg増やすと118kgになります。でも、このクルマには100kgしか載せる場所がないんです。だからもしリストリクタの対応が間に合わなかったら出走できないかもしれないという状況でした。

それでもなんとか徹夜でモノを作って、金曜日の車検時にようやく手持ちでパーツが届いて走り始めることができました。当然、台上試験で確認もできないし、エンジンはぶっつけ本番、本来ならありえない状況でのレースでした。オートポリスではタイヤテストもしていないし、去年もウェットの路面しか走っていないので、ドライの路面で走ったことがないんです。土曜日も悪天候でドライの路面を確認することができませんでした。

結局、エンジンも車両セッティングもタイヤも確認できない状況で決勝をスタートしましたが、リストリクタが小さくてストレートが更に遅くなってしまったので、後方からスタートすると集団に飲み込まれて前へは上がれないという展開になってしまいました。物理的に無理なことを要求されて、なんとか間に合わせて戦って、最終戦につなげられるポイントを積み重ねてゴールできたことは、皆様のご協力の賜物と感謝しております。

ファンの皆様、不安定な天候の中ご声援ありがとうございました。