Rd.8 MOTEGI

2013年11月6日

「MUGEN CR-Z GT」
最終戦で2位となり、ハイブリッドカーとして
初めてシリーズ王座を獲得!

シリーズ名:2013 AUTOBACS SUPER GT SERIES ROUND 8
大会名:MOTEGI GT 250KM
距離:4.801km×53周(254.45km)
予選:11月2日(土)曇り・観衆:14,500人(主催者発表)
決勝:11月3日(日)曇り・観衆:30,000人(主催者発表)

 #16 MUGEN CR-Z GT(武藤英紀/中山友貴組)は、11月2日〜3日にツインリンクもてぎ(栃木県)で開催されたSUPER GTシリーズ第8戦に出場した。ポイントランキングはチームランキングでは2番手と12ポイント差、ドライバーランキングでは2番手と8ポイント差でランキングトップを守ったまま迎えたシリーズ最終戦である。

 シリーズ最終戦は、ウェイトハンディキャップがすべてゼロになる。前回のレースで#16 MUGEN CR-Z GTは68kgのウェイトを積んでいたが、それを下ろして身軽になる。また、前回のレースで28.5mm×2へと絞り込まれた吸気リストリクターは再び29.1mm×2と、シリーズ第6戦と同じレベルまで拡大された。ただし、シリーズ第5戦から受けた車高8mm増加の性能調整と、給油スピードを遅くする流量リストリクターは引き続き課せられたままである。

 ウェイトを積んで車重が増せば、ブレーキングで減速しにくくなりコーナーへの飛び込みが難しくなるが、減速時の挙動そのものは落ち着き、後輪もしっかりと路面をとらえるのでハイブリッドシステムにとっては回生の効率が上がる。逆に、車重が軽減されれば、ブレーキングでコーナーの奥に飛び込めるようになりレーシングカーらしい俊敏な方向転換が可能になるが、挙動はピーキーになって状況によっては回生の効率が落ちる。車高を上げられたことによって、この傾向は強まった状態であり、チームは車重軽減を受けて挙動を抑制するセッティングを探る一方、ドライバーはバランスを常に意識してコースを周回しなければならない。

 ツインリンクもてぎの合同テストは9月中旬に行われており、その時点での性能調整はその後の変更を経て今回のレースと同じ条件だったので、もてぎテストの結果を分析して今回の持ち込みセッティングが行われた。

11月2日(土)

公式練習:2位(ベストタイム:1分49秒384)

 薄い雲を通して陽が射すコンディションの中、練習走行は午前9時から2時間の予定で始まった。路面はドライである。#16 MUGEN CR-Z GTは、いつものようにまず武藤選手がステアリングを握って走り始めた。武藤選手は5周目、ベストタイム1分49秒384を記録した。武藤選手は、残り1時間となって交代のタイミングを迎えた20周目、最終ビクトリーコーナーでスピン。無事コースには復帰して次の周にピットへ戻った。

 ピットイン後、ガレージの中でドライバー交代を含む作業をしている間に、11号車が武藤選手の記録したタイムを0秒120上回るタイムを記録、#16 MUGEN CR-Z GTは2番手へ後退した。

 マシンを引き継いでコースインした中山選手は、10時50分にGT500ボードが掲示されるまでのおよそ50分間にわたって走行を重ねた。だが中山選手も走行終了直前に90度コーナーでスピンを喫した。中山選手は自走してピットへ戻り、#16 MUGEN CR-Z GTは総計で42周を走って練習走行を終えた。

公式予選:3位(Q1:1分48秒636 Q2:1分48秒389)

 スターティンググリッドは、全マシンが参加するQ1と、Q1の上位13台のみが出走できるQ2の、2段階制ノックアウト方式で決まる。チームはいつものようにQ1に中山選手、Q2に武藤選手という組み合わせで公式予選に臨んだ。

 午後2時からのQ1に出走した中山選手は、コースオープン後、状況を確認した後にコースイン、じっくりとウォームアップを始めた。ところがコース上に停止したマシンが現れたためセッションは赤旗で中断、中山選手はタイムアタックに入る前にピットへ戻って一旦待機に入った。

 セッションは午後2時10分に再開された。中山選手は2周かけてタイヤをウォームアップするとタイムアタックに入り、1分48秒636を記録した。このタイムは従来のGT300コースレコードで、この時点で#16 MUGEN CR-Z GTはトップとなった。中山選手はそのままピットへ帰還。2番手のマシンに0秒454の差をつけてトップのままQ2進出を決めた。

 14時40分から、GT300クラスのQ2セッションが始まった。コースインした武藤選手は3周にわたってタイヤをウォームアップすると、4周目にアタックをかけ1分48秒543を記録した。しかしこの時点で3番手である。

 武藤選手は5周目スローダウンしてタイヤを冷やし回生をかけて充電を行うと、チェッカーフラッグ直前に2回目のタイムアタックをかけた。ラップタイムはさらに縮まり1分48秒389となったが、順位を入れ替えることはできず、3位に終わった。このセッションでは、#16 MUGEN CR-Z GTを含む3台のマシンがGT300のコースレコードを上回るタイムを記録した。

11月3日(日)

フリー走行:7位(ベストタイム:1分51秒376)

 ツインリンクもてぎは、早朝から霧に包まれた。徐々に霧は薄くなってはいたが、フリー走行開始時にはまだ視界は晴れきっておらず、ライトオンの指示の下、コースがオープンとなった。

 まずステアリングを握った武藤選手は走行開始後5周目に1分51秒479を記録してクラス5番手につけると、ピットに帰還、決勝レースに向けてタイヤとセッティングの状況を確かめるために走行とピットインを繰り返した後、セッション残り5分となったところで中山選手に交代し、30分間のフリー走行を終えた。その後15分間のサーキットサファリの時間帯にも武藤選手と中山選手が交代しながら決勝へ向けて調整と確認を行った。

決勝:2位(50周 1時間35分44秒866 ベストタイム:1分51秒379)

 天候は薄曇り。ドライコンディションのコースでレースが始まった。スタートドライバーは武藤選手が務めた。3番手のスターティングポジションから武藤選手は3番手を守って慎重にレースを始めた。

 3位でレースを終えれば、4号車が優勝しない限りシリーズチャンピオンになれる。トップは11号車で独走状態に入ったが、4号車は後方を走っている。11号車が優勝しても3位を守ればシリーズチャンピオンは確保できるという位置関係である。その後、前方を走っていた61号車がペースダウンしたため武藤選手は10周目のダウンヒルストレートでスリップストリームに入り90度コーナーで順位を入れ替えて2番手へ進出した。

 武藤選手は2番手をキープし、トップから30秒弱後れ、3番手には4秒強の差をつけて21周を走り終え22周目にピットイン、中山選手へ交代した。ピットでは給油とリヤ2輪のみのタイヤ交換が行われた。

 ピットインを遅らせる戦略をとったチームが多かったため、コースに復帰した中山選手の順位は一時的に8番手へ後退した。中山選手は慎重にタイムを刻んで周回を重ね、30周目には5番手、31周目には4番手、上位がすべてピットインを終えた34周目には、交代前と同じ11号車に次ぐ2番手へ復帰した。

 35周目の段階でトップの11号車は40秒強前方、3番手の61号車は12秒弱後方にいた。だが、無交換だったフロントタイヤに加え、リヤタイヤの消耗も進み始め、中山選手はタイヤへの負担を考慮してペースを作らざるをえない状況となっていた。このスキに、後方から61号車、4号車が周回毎にその差を縮めて詰め寄ってきた。

 差は周回毎に縮まる。もし61号車、4号車に抜かれて4番手へ落ちてしまえば、ポイントランキングは逆転してシリーズチャンピオンはトップを独走する11号車のものになってしまう。だが中山選手は確実にラップタイムをまとめ、2番手を守ったまま3番手に0秒478の差を保ってチェッカーフラッグを受けた。

 この結果、TEAM無限は、チームポイント18ポイント(2位+1周遅れ完走ポイント)のチームランキングポイントを加算、107ポイントとし2番手と7ポイント差でシリーズチャンピオンとなった。一方、武藤/中山組は15ポイント(2位)のドライバーランキングポイントを獲得し、ポイント総計を85ポイントとし、2番手と5ポイント差でシリーズチャンピオンに輝いた。ハイブリッドカーがシリーズチャンピオンとなったのは国内GTレース史上初の快挙であった。

武藤英紀選手コメント

公式予選のタイムアタックは3番手に終わりましたが、自分としては納得のいくものでした。でもコーナーの突っ込みでクルマの姿勢を落ち着かせて回生をかけて電気を残すという意味では失敗したかもしれません。決勝のスタートでは慎重に行きました。優勝してレースを終えたかったけど、あれだけ(11号車が)速いととても追いつけないので、無理しても意味がないし2位でもチャンピオンは取れると冷静になりました。

中山選手に替わってからは長く感じました。特に残り10周は後方から攻められたので、考えなくていいことを考えてしまいました。去年7月にデビューして以来、初めてのハイブリッドカーに起きた初期のトラブルをひとつひとつ乗り越えて毎レースのように開発を着実に進めてここまで来ました。2年でチャンピオンを獲れと言われていたのでそれが達成できたことが嬉しいし、チームにも感謝したいと思います。

中山友貴選手コメント

僕は今年からこのクルマに乗ったのですが、当初からすでに完成度や信頼性は非常に高いなと感じていました。リヤ2本交換という作戦だったのでフロントタイヤのロックに気をつけていましたが、終盤は消耗が進んで何度かロックさせてしまいました。またリヤも武藤さんが走っている段階でタレがあると無線で聞いていたのでとにかく大事にして走りましたが、やはり消耗が進んで非常に厳しい状況になりました。

でもチームの判断もタイヤの性能も、1シーズン一緒に仕事をしてきて信頼していたので壊れてしまうという不安はありませんでした。後からは追いかけられていましたが、前を走っている限りは、いざとなればハイブリッドシステムで頑張れるし、抜かれることはないと焦りはしませんでした。ただ、チャンピオンシップのことを考えると集中できなくなりそうなので目の前のコーナーだけを見て走るように心がけました。初めてのタイトルを心から嬉しく思います。

熊倉淳一監督コメント

性能調整に振り回された1年でしたが、スタッフがよくやってくれました。今日のレースでは交換しなかったフロントタイヤの消耗が限界まできていました。武藤選手がピットインした状態でそれがわかったので、非常に緊迫した展開になりました。

ただ、そこまで攻めてタイヤを使わないとライバルに対抗できないと当初からわかっていて、覚悟はしていました。実際、限界ギリギリの状態になりましたが、(タイヤの大事をとってピットインして優勝を逃した)第2戦のこともあったので、ピットインさせるつもりはなく、そのまま走りきろうと決めていました。

シリーズで優勝はできませんでしたが、同じCR-Z GTが2勝しましたし、車両のポテンシャルは示せたと思っています。我々としてはウェイトハンディの巡り合わせもあって優勝はできませんでしたが、シリーズを通して常に車両性能を発揮し成績を残せたのでチャンピオンになることができました。

発展途上の技術を投入するのでレース毎にフィードバックを繰り返し、ある程度の目的は達成する事が出来たと思います。量産車の未来に対して重要であるハイブリット車両でチャンピオンを獲得するというのは、歴史的にすごく大きな事と思いますので。
フィニッシュした瞬間、やり遂げたなと思いました。

ファンの皆様、1年間ご声援ありがとうございました。