Rd.7 SUZUKA

2013年11月13日

山本選手、
シリーズチャンピオンを逆転で奪取!
TEAM無限、初優勝を遂げる!

シリーズ名:2013全日本選手権スーパーフォーミュラ第7戦
大会名:2013 全日本選手権スーパーフォーミュラ シリーズ第7戦 鈴鹿サーキット
距離:RACE1 5.807km×20周(116.140km)
距離:RACE2 5.807km×28週(162.596km)
予選:11月9日(土)曇り・観衆:11,500人(主催者発表)
決勝:11月10日(日)雨・観衆:11,000人(主催者発表)

 全日本選手権スーパーフォーミュラ第7戦(シリーズ最終戦)が三重県鈴鹿サーキットで開催された。TEAM無限は、前戦に引き続き#15佐藤琢磨選手と#16山本尚貴選手の2カー体制でこのレースに臨んだ。シリーズ最終戦の決勝レースでは20周のRACE1と28周のRACE2が別々に行われる変則的な2レース制が採られる。#16山本選手は、シリーズポイントランキング3番手につけて最終戦を迎えた。

 #16山本選手は、トップの選手とは13ポイント差だが、シリーズ最終戦では2レース制に伴って特別ポイント制度が採用されており、それぞれのレースで通常レースにおける半分のポイントが与えられるほか、各レースの優勝者にはさらに3ポイントずつが与えられる。また、それぞれのレースのポールポジション獲得者には1ポイントが与えられるので、両レースで優勝すれば合計16ポイント、どちらもポールトゥウインなら合計18ポイントを獲得することができる。ランキングトップの選手は今回レースを欠場しており、#16山本選手はこのレースの結果次第ではポイントランキングを逆転してシリーズチャンピオンになる可能性を残している。

11月9日(土)

フリー走行
#16山本 1位(ベストタイム:1分38秒581)
#15佐藤 14位(ベストタイム:1分39秒632)

 午前中に行われたフリー走行は、気温18.5℃のコンディションで開始された。その中で、タイトル奪取にかける#16山本選手は快調で、セッション半ばには1分39秒418を記録してトップに立った。このタイムはセッション残り17分を切ったところで他車に更新されるが、セッション残り6分30秒となったところで再び#16山本選手が1分38秒581という好タイムを記録、トップを奪い返した。#15佐藤選手は、操縦性を調整しながら1分39秒632を記録、14番手でセッションを終えた。

公式予選
#16山本(Q1:1位 Q2:2位 Q3:1位)
#15佐藤(Q1:10位 Q2:9位)

 公式予選は今回も3段階のノックアウト方式で行われた。全車が出走するQ1(20分間)の上位14名がQ2(7分間)に進出。Q2の上位8名がQ3(7分間)に進出。スターティンググリッドは、ポールポジションから8番グリッドまではQ3の順位、9番手から14番手まではQ2の順位、15番手以下のグリッドはQ1の順位に従って決定する。

 ただし変則的な2レース制に伴い、RACE1のスターティンググリッドはQ1の順位で決定し、その後Q2、Q3を行ってRACE2のスターティンググリッドを決めることになる。

 午後、薄曇りの中で行われた公式予選では、まず#16山本選手がトップに立った。セッション残り10分となって全車一旦ピットへ戻り、タイムアタックのためにタイヤを交換、残り7分となったところで次々とコースへ戻ってタイムアタックに入った。注目の#16山本選手は、後方からコースイン、セッション終了を告げるチェッカーフラッグが振られる中、1分38秒055を記録、トップに立った。このタイムは現行マシンによる鈴鹿サーキットのコースレコードである。この結果、RACE1のポールポジションは#16山本選手が獲得した。#15佐藤選手は10番手でQ2進出を決めた。

 続いて行われたQ2では、#16山本選手はQ3へ進出するためのセッティングやドライビングを確かめることに注力、2番手のタイムでセッションを終えQ3進出を決めた。しかし#15佐藤選手は、操縦性の改善が進んだものの、わずか1000分の5秒差で9番手に終わり、Q3進出はならなかった。

 RACE2のスターティンググリッド上位を決めるQ3で、#16山本選手は渋滞を避けて最後にコースイン、2周かけてタイヤをウォームアップ、タイムアタックに入った。ところがタイムアタック途中でコース上に停止車両が発生したためセッションが赤旗中断となり、#16山本選手もタイムアタックを打ち切ってピットへ戻らざるをえなくなってしまった。#16山本選手のタイムはこの時点で6番手であった。

 セッションは残り3分で再開されることになったが、コースイン後1周でタイヤをウォームアップし直し、一旦タイムアタックをしかけたタイヤでタイムアタックをやり直さなければならないという厳しい状況である。しかしタイムアタックに入った#16山本選手は全セクターでベストタイムを記録し、最終的に1分37秒774をたたき出してポールポジションを獲得した。このタイムはQ1で自ら記録したばかりのコースレコードをさらに更新するものだった。

 この結果、#16山本選手はRACE1に続きRACE2でもポールポジションを獲得することになった。#15佐藤選手のスターティンググリッドはQ1の結果によりRACE1で10番手、Q2の結果によりRACE2で9番手と決まった。

11月10日(日)

決勝 RACE1
#16山本 優勝(20周 38分52秒509 ベストラップ1分55秒016)
#15佐藤 9位(20周 39分31秒944 ベストラップ1分55秒088)

 前夜から鈴鹿地方の天候は悪化、朝から降った雨で鈴鹿サーキットの路面はウェットコンディションとなった。RACE1を前に、午前9時45分から8分間のフリー走行が行われたが、雨はほぼ止んでいたものの路面は完全ウェットで、この短い時間にセッティングを見直さなければならない。

 フリー走行の後、競技車両はスタートのためダミーグリッドについたが、チームはグリッド上でセッティングの変更を決意、短い時間のうちに#16山本選手のマシンのスプリングとダンパーを変更してスタートに備えた。全車レインタイヤを装着してスタート。スタート合図の瞬間、ポールポジションの#16山本選手はうまく加速したが、#15佐藤選手はスタート加速に失敗し、最後尾まで順位を落としてしまった。

 雨は止んでいたが水しぶきが高く上がるコンディションで先頭に立った#16山本選手はオープニングラップのうちに後続車を大きく引き離して最終コーナーのシケインへ飛び込んだ。しかし減速で止まりきれず、姿勢を崩してそのまま直進する形でオーバーラン、コースへは復帰できたものの、後続車1台に先行を許してしまった。

 水しぶきを浴びる不利な立場になった#16山本選手は追撃を始めたが、2周目のヘアピンの立ち上がりで先頭車両がトラブルを起こして失速したため、リスクをおかすことなくトップを奪い返すことに成功した。その後#16山本選手は、ベストタイムを連発しながら先頭を走って2番手の選手を周回毎に引き離し独走に持ち込んだ。

 一方、一旦は最後尾まで順位を落とした#15佐藤選手も、上位に劣らぬペースで追い上げを開始、水しぶきの上がる難しいコンディションの中、前車を追い抜いて順位を着実に上げていった。

 その後、20周のスプリントレースを#16山本選手は危なげなくまとめ上げ、先頭でチェッカーフラッグを受けた。2010年に国内トップフォーミュラにデビューして以来、これが初めての優勝であった。また、同じ2010年に独自チームで国内トップフォーミュラ活動を開始したTEAM無限にとっても初めての優勝であった。

 この結果、#16山本選手は2つのポールポジション獲得でそれぞれ1ポイントの合計2ポイント、優勝での5ポイント(2レース制により通常ポイントの半分)に3ポイントのボーナスポイントを獲得、選手権ポイントを10ポイント加えてポイントランキングトップの選手に3ポイント差に迫るランキング2位へ進出しRACE2を迎えることになった。

決勝 RACE2
#16山本 3位(28周 50分46秒480 ベストラップ1分43秒682)
#15佐藤 8位(26周 51分37秒296 ベストラップ1分43秒864)

 午後2時、RACE2に先駆けて8分間のフリー走行が行われた。雨は止みコースが乾き始めているコンディションで、TEAM無限は、レース中の路面状況回復を見越して、ドライタイヤを装着、路面状況とセッティングを探った。

 RACE2ではレース中に1回のタイヤ4本交換ピットストップが義務づけられている。スタートの時点ではドライタイヤを使用するのはリスクが高すぎるので、TEAM無限を含む上位陣はレインタイヤでスタートし、路面コンディション回復を待ってピットインしドライタイヤへ交換するという作戦を採った。

 スタートでは#16山本選手が、2番手の選手を押さえ込んでトップに立った。#15佐藤選手も好スタートを切って一気に順位を上げたが、スプーンカーブでオーバーランして逆に10番手まで順位を下げてしまった。

 路面はすでに予想以上の早さで乾きだしていた。レインタイヤでスタートした一部チームは1周を走ったのみでピットイン、ドライタイヤへ交換した。しかしトップを走る#16山本選手は2周目の周回に入り、2周を走り終えたところでタイヤ交換のためのピットインを行った。#15佐藤選手は、#16山本選手の作業が終わるのを待つためさらに3周目の周回に入った。

 レインタイヤ勢は続々とドライタイヤへの交換を行ったが、当初からドライタイヤを装着していたスターティンググリッド下位の選手は周回数を重ねてピットインをレース後半へ引き延ばす作戦を採ったため順位は混乱し、上位陣のピット作業が終わった10周目の見かけ上の順位は、#16山本選手が7番手、#15佐藤選手の順位が12番手となった。#16山本選手の前方には、まだピットイン義務を果たしていない車両が走っており、1周目にピットインした車両2台には先行されてしまったものの、計算上は3番手となる予測がついていた。もし3位でフィニッシュできれば#16山本選手はシリーズチャンピオンを獲得できる。

 ところがレース終盤になって再び雨が降り始め、徐々に路面が濡れ始めて波乱が起きた。タイヤ交換義務を引き延ばしたマシンを1台はさみ、20周目の順位は#16山本選手が4番手(実質上の3番手)、#15佐藤選手の順位は12番手(実質上の11番手)にいた。

 レースも残り4周となったところでトップを走るマシンにトラブルが発生、その後このマシンはコースアウトしてレースから脱落したため順位はひとつずつ繰り上がった。タイヤ交換を引き延ばしていたマシンはフィニッシュ直前の27周目にピットインしたため、#16山本選手は2番手へ順位を上げ、シリーズチャンピオン獲得は安泰という状況となった。

 しかし雨は強まり、特に雨の強い130Rコーナー付近ではドライタイヤを装着したままのマシンは姿勢を崩しながらの走行を強いられた。27周目の最終シケインで#16山本選手は減速しきれずスピン直前になるまで姿勢を崩してオーバーラン、かろうじてコントロールを取り戻してコースへ復帰したが後続車に先行を許し3番手へ順位を落としてしまった。

 後方からは#16山本選手を上回るペースで追い上げているマシンがおり、もし追いつかれて順位を入れ替えられてしまえば#16山本選手のシリーズチャンピオン獲得はできなくなる。オーバーランからコースに復帰した#16山本選手はきわどいコンディションの中、ペースを戻して最後のラップに突入した。

 後方では、上位に匹敵するペースで追い上げていた#15佐藤選手が着実に順位を上げて5番手を争う3台の集団に追いつき、隙を狙う展開となっていた。しかしそこでチェッカーフラッグが振り下ろされた。#16山本選手は2位の選手から1秒122後、3位でレースを終えた。背後には0秒538という僅差で後続車が迫っている状況だった。#15佐藤選手は8位でフィニッシュした。

 3位に入賞した#16山本選手は選手権ポイントを3ポイント加え、選手権ポイントを総計37ポイントとし前戦までランキングトップにいた選手に並んだ。選手権規定では同点の場合、1大会で獲得したポイントが多い選手を上位とすると定められており、今回の大会で13ポイントを獲得した#16山本選手が逆転でシリーズチャンピオンとなった。#16山本選手にとっては初めての王座であり、5シーズンにわたった現行規定によるシリーズでHonda製エンジンを使用したドライバーがチャンピオンになったのは09年のロイック・デュバル選手以来の快挙であった。また、8位に入賞した#15佐藤選手は、TEAM無限でスポット参戦して以来、初めての選手権ポイントを獲得した。

山本尚貴選手コメント

ゴーカートをやっていた小僧が、とうとうここまで来られました。自分でも信じられません。とにかく今週はあきらめてはいけないと自分に言い聞かせていました。もちろんチャンピオンを獲りたいと思ってこの週末に臨んだんですけど、条件的には非常に厳しいなと思っていました。ポールポジションを取って、なおかつ優勝しなければいけないんだけど、僕はこれまで優勝をしたことが1回もありませんでしたから。でも土曜日の走り始めからクルマの調子が良かったので、これはいけるかもしれないと希望が出てきました。

RACE1では結果的にラッキーな面もあってトップに出られたのですが、その後は本当にクルマの調子が良かったので優勝できました。直前のフリー走行の状況を見て、エンジニアさんとメカさんがグリッド上でセッティングを変えてくれたんです。それが決まったんだと思います。

RACE2ではスタートがうまく決められました。ただ、コースが乾いていることは感じたんですが、決断を1周遅らせてしまったのが響いて順位を落としてしまいました。途中、ペースが上がらなくて半ばあきらめかかったんですが、あそこであきらめないでよかった。その一言に尽きます。最後にシケインで滑ったときには、スピンしたらおしまいだと思ってなんとか姿勢を取り戻しました。でもまさか本当にチャンピオンを獲れるとは思いませんでした。

クルマもエンジンもすばらしかった。僕を支えてくれるチームも含めてすべてが噛み合ったからこそたどり着いたチャンピオンだと思います。

佐藤琢磨選手コメント

 予選の結果は少し残念でした。Q1ではクルマの動きが決まらなくて、Q2に向けてセッティングを大幅に変えなくてはなりませんでした。Q2のアタックでは良い動きになりましたが、タイヤライフから見ても予選はひとつのセグメントでワンチャンスですから、後手に回ってしまった形になってしまい、僅差でQ3進出を逃してしまいました。

RACE1ではスタートに失敗してしまい最後尾に落ちてしまいましたが、雨のコンディションの中でのペースは良かったし、順位も上げられました。まともにスタートできていれば上位入賞もできるペースだったので残念でした。

RACE2はスタート直後から予想以上に路面が乾きだしていて、2周目のうちに、ドライタイヤに交換しようと決めました。山本選手がチャンピオンシップを争っているので先に交換してもらい、自分はその後で交換して追い上げるという形になりました。順位はそのときに一度落としてしまいましたが、そこから徐々に追い抜きも出来たし、雨が強くなった最後の2周でも順位を上げられました。あのまま、あと数周あったらおもしろい展開になったかなと思いますけど、仕方ありませんね。

リザルトは思うように繋がりませんでしたが、楽しめるレースでした。チーム無限全員のすばらしい働きぶりと、山本選手の力強い走りがチャンピオン獲得につながったこと、そのチームの一員としてレースができたことを心から嬉しく思っています。

手塚長孝監督コメント

まずは最高!と言いたいです。みなさんハードルが高いなと思っていただろうし、我々もハードルが高いだろうなと思いながら乗り込んだんですが、予選でダブルポール。そこから『これは行けるぞ、獲りに行こう』ということで挑みました。あまりのハードルの高さにむしろ『思う存分暴れよう』と割り切れたのも確かですね。

我々TEAM無限としては、以前からまずは1度でも優勝したいと思っていたんです。それが目標でした。それがRACE1で達成できたことがとても嬉しいです。RACE1のグリッドではエンジニアが瞬時に状況を判断して、その技術を駆使して調整しました。勝つために攻めていったんです。それであれだけ山本選手がぶっちぎってくれたんだから最高です。

RACE2は難しかった。3位までには入れるんじゃないかと、思っていましたが、少し苦しい展開でしたね!もちろん優勝はしたかったけれど、ああいう天候とコンディションだったので、ドライのセットにして守ってもいいんじゃないか、3位以内に入るのが目的だと心を決めました。残り3分の雨で、ヒヤヒヤドキドキでした。山本選手が凄かった! 彼の成長、ドライビングは最高でした。最後は、前にペースメーカーになるクルマがいなかったから苦しかったんじゃないでしょうか。小暮選手が前に出て、逆に小暮選手のペースを見て走れたんでしょう。シーズンを振り返ると。

チーム自体が育って、本田技術研究所のアドバイスや解析もいただいて、経験豊富な佐藤選手からもアドバイスをもらって、全体が一丸となって戦った結果ですね。スタッフも最後まで諦めずに仕事をしてくれたし、皆の思いがこの結果を引き寄せたと思います。でもとにかくまず山本選手を褒めてやってください。山本選手には感動させられました。

スーパーフォーミュラの初代王者として胸をはって来期に挑んでもらいたいです。更なる進化を期待しています。

最後に1年間応援してくださいました皆様に心よりお礼申し上げます。
ありがとうございました。