Rd.5 SUZUKA

2013年8月21日

クラス最大のウェイトハンディを抱えながらも5位入賞!
シリーズポイントランキング首位をキープ!

シリーズ名:2013 AUTOBACS SUPER GT SERIES ROUND 5
大会名:第42回 インターナショナルポッカサッポロ 1000km
距離:5.807km×173周(1004.611km)
予選:8月17日(土) 晴れ ・ 観衆:26,500人(主催者発表)
決勝:8月18日(日) 晴れ ・ 観衆:36,000人(主催者発表)

 #16 MUGEN CR-Z GT(武藤英紀/中山友貴組)は、8月17日〜18日に鈴鹿サーキット(三重県)で開催されたSUPER GTシリーズ第5戦に出場した。

 ここまで3戦連続で2位入賞を果たし、シリーズポイントランキング首位で今回のレースを迎えた#16 MUGEN CR-Z GTには、クラス最大となる98kgのウェイトハンディが課せられた。シーズン中に課せられるウェイトイハンディの最大値100kgにほぼ達しようという重荷である。

 これに加えて、今回のレースの直前になって、GTアソシエイションは前回の吸気リストリクター縮小に引き続き、JAF-GT300車両の性能をさらに抑制するため、参加条件を改定した。従来、2013年JAF競技車両規則が「空気圧160kpaのタイヤを取り付けた状態で車両のすべての外縁から測定し、少なくとも45mmの地上高が確保されなければならない」と定めているように、JAF-GT車両の最低地上高は「45mm」であった。しかし、GTアソシエイションは8月2日付けのブルテンで「45mm」を「53mm」と変更した。これによって、#16 MUGEN CR-Z GTはレース本番を前に突然車高を8mm持ち上げなければならなくなってしまったのである。

 鈴鹿1000kmレースを想定した合同テストは、この車高規定決定以前の7月19日から20日に行われていたので、ウェイトハンディを想定したセッティングは前もってテストできたものの、セッティングやタイヤ選定などは前仕様の状態で行っており、準備を白紙に戻して真夏の長丁場を迎える厳しい状況となった。

 車両には、真夏のレースを考慮し、新たにエアコンを装備した。これはGT500クラスで用いられているシステムを基本としたものだが、コンプレッサーは、バッテリーで駆動する電動システムに変更されている。放熱用のコンデンサーはラジエター上部に設けられ、グリルから導いた空気で冷却、ボンネット上へ排気を行う。電動システムなのでエンジンのパワーロスはない。これにより、クールスーツ・システムを搭載する必要はなくなる。

 また、車両には各種空力テスト・アイテムも追加され、更なるダウンフォースの増大を狙っている。

8月17日(土)

公式練習:10位(ベストタイム:2分03秒369)

 鈴鹿サーキットは早朝から晴天にめぐまれ気温は上昇した。朝9時20分から1時間にわたって行われた公式練習では、まず中山選手がステアリングを握りコースインした。急遽決まった、車高変更に対応するためのセッティングを試す重要な機会であったが、周回を重ねると車高変更の影響でサスペンション関連部品に予想外の不具合が発生、武藤選手は走行を中断してピットへ戻った。最終的に中山選手は14周、武藤選手は7周、を走行してセッションを終えた。

 最低地上高を8mm上げなければならなくなったため、#16 MUGEN CR-Z GTには、ロール量が大きくなる一方、ウェイトハンディによる重量増大の影響でサスペンションやブレーキ等に負担がかかる状況が認められた。しかしトラブル対応のため、十分な走り込みとセッティングができないまま公式予選セッションを迎えざるを得なくなった。

公式予選:14位(Q1:14位・Q2:−)

 スターティンググリッドは、全マシンが参加するQ1と、Q1の上位13台のみが出走できるQ2の、2段階制ノックアウト方式で決まる。

 チームはQ1に中山選手、Q2に武藤選手という組み合わせで公式予選に臨んだ。セッションはそれぞれ15分間と12分間。真夏の太陽が照りつける午後2時から15分間の予定で始まったQ1セッションで、中山選手はタイヤを暖め3周目にタイムアタックをかけて、2分04秒148を記録し、この時点で8番手につけた。だがしかし、他車もタイムアタックにかかって中山選手の順位は下がる。中山選手は1周クールダウンすると再度タイムアタックにかかり2分03秒975までタイムを縮めたものの、セッション終了時点では13番手に0秒062及ばず14番手で終わり、Q2進出はならなかった。この結果、#16 MUGEN CR-Z GTのスターティンググリッドは14番手と決定した。

8月18日(日)

フリー走行:9位(ベストタイム:2分04秒975)

 決勝レースの行われる日曜日の午前8時30分から30分間にわたってフリー走行が行われた。鈴鹿サーキット上空は早朝から薄曇りで、セッションが始まる直前にはコースの一部で降雨があるとしてウェット宣言が行われたが、路面状況は悪化せずドライのまま推移した。

 ここまで、車高変更に対応するための走り込みを十分に出来ていなかったチームは、このセッションを使って何種類かのセッティングを試し、過酷な1000kmレース本番に備えた。武藤選手がセッションの前半6周を走行、中山選手が後半3周を走行した。

決勝:5位(160周 5時間55分42秒501 ベストタイム:2分05秒983)

 午後12時30分の決勝スタートを前に天候が好転し、鈴鹿サーキットには真夏の空が戻ってきた。路面は完全ドライ。レースでは特別競技規則により、最低4回以上のドライバー交代を含むピットインが義務づけられる。スタートは武藤選手が務めた。

 スタートでは混乱も起きずクリーンにレースが始まったが、武藤選手のペースは上がらず少しずつ順位を落とした。ウェイトハンディ増大とリストリクター径縮小の影響でトップスピードが伸びづらく、ラップタイムは速くてもコーナーで前方のマシンにつかえると、立ち上がり加速で後続車両の追い抜きを許さざるをえなかったためだ。また、タイヤ選定も車高変更以前のテストに基づいて行っており、レース序盤は車両やタイヤをいたわり状況を確かめる必要があった。

 武藤選手は32周を走って予定通りピットイン、中山選手に交代した。コースに復帰した34周目、#16 MUGEN CR-Z GTの順位は13番手に上がった。スタート直後の集団が散らばって前方に余裕ができ、本来のラップタイムで走行できるようになってペースも上がった。

 中山選手は徐々に順位を上げ、37周目には12番手、38周目には11番手、46周目には10番手、48周目には9番手、49周目には8番手、50周目には7番手へとポジションアップする。61周目でコース上に発生したアクシデントを受けセーフティカーが導入され、隊列を整えて再スタートが行われた。このタイミングを使い64周を走り終えて中山選手はピットイン、武藤選手に交代した。

 予定のピットストップのタイミングとかみ合い、タイムロスを最小限に留めることに成功し、武藤選手は3番手でコースに復帰できたが、隊列を整えた結果、再び集団の中での走行を強いられ本来のペースで走行することが難しくなり、逆に苦しい戦いとなった。

 武藤選手は99周を走って、事実上6番手でピットイン、中山選手にマシンを引き継いだ。中山選手はスタート後#16 MUGEN CR-Z GTにとってベストタイムとなる2分05秒983を記録しながら順位を2番手にまで上げて、最後のピットストップに向けて周回を重ねた。そして132周を走り終えて4回目のピットストップを行い、武藤選手にマシンを引き継いだ。

 しかし同時期にピットストップを行った後方車両は短時間に給油作業を終えてコースに復帰、武藤選手が給油を終えてコースに復帰したときには順位は4番手へ後退していた。

 実は、レース直前にGTアソシエイションが決めた参加条件では、FIA-GT車両の燃料タンク容量を従来の「車両公認書記載の燃料タンク容量が110リッター未満の車両は燃料の搭載総量は100リッターまで。車両公認書記載の燃料タンク容量が110リッター以上の車両は燃料の搭載総量は110リッターまでとする」としていた規定を改定、車両公認書記載容量までの搭載を認めていた。その結果、FIA-GT3車両には戦略の幅ができていたのである。

 コースに復帰した武藤選手は、さらに後方から追い上げてきたマシンの先行を許し、結局6番手でチェッカーフラッグを受けることとなった。その後上位入賞車両が車両規則違反に問われて失格したため、最終的な順位は5位となった。

 この結果、TEAM無限は、チームポイント11点(5位。走行距離700kmを超えるレースに対するボーナスポイントを含む)のチームランキングポイントを加算、総計72点で2番手に15点の差をつけてシリーズランキングトップの座を固めた。また武藤英紀/中山友貴組は8点(5位。走行距離700kmを超えるレースに対するボーナスポイントを含む)のドライバーランキングポイントを獲得し、ポイント総計を57点とし、2番手との差を13点差に広げ、こちらもシリーズランキングトップを守った。

武藤英紀選手コメント

土曜日のフリー走行で、今回のハンディウェイトと車高が上がったことによって、これまで考えられなかったところにトラブルが出たりして十分走れないまま予選だったので、ほとんど予選セットもできずロングも確認できない厳しい状況でした。でも決勝前のフリー走行で何種類ものセットを短い時間の中で変えながら方向性だけ見つけてレースに臨みました。短い時間ながら、チームがよくここまでクルマを仕上げてくれたと感謝しています。

最後のスティントに関しては他のGT3勢もピット時間をすごく短くしたみたいで、そこで順位の変動が起きてしまったんですが、98kgのウェイトハンディでこの順位でフィニッシュできたことは非常に大きな意味があるし、シリーズを考えて見たらこのポイントは絶対後半に活きてくると思うので、自分としてはいいレースだったと思います。

個人的には、実は少し熱中症の症状が出ていました。重心位置を考えてシートポジションを変更したら、冷風のダクトの方向とずれてしまったようです。でもトラブルでロングのテストができなかったので決勝が始まるまで気づかないままだったんです。今までで一番苦しいレースだったかもしれません。でも、1点でもポイントを持ち替えるというのが目標だったので、まさかこの順位まで来られるとは思っていなくて、良かったと思います。

中山友貴選手コメント

最初のフリー走行を満足に走れず1000kmはロングランなので、少し不安が残りました。レースがスタートしてみて序盤は高温だったのでタイヤも含めて、武藤さんがマシンをかばいながら我慢するスティントになりましたが、セカンドスティント以降はなんとかいいペースで走る事ができて確実に順位が上がり、最後にはもしかしたら表彰台かというところが見えてきました。

周囲との作戦の違いもあったので終わって見たらこの順位でしたが、シリーズを考えればランキング2位、3位より前でフィニッシュできたので良い結果だったかなと思います。チームや開発をやっているスタッフのおかげでノートラブル、新しいハイブリッドシステムも最後まで安定して働いてくれましたし、自分もミスなく最後まで走る事ができました。現状一番重いクルマで1000km走ってこの順位はそんなに悪くはないなと、みんなに感謝しています。

開幕時に比べたら(ウェイトハンディとリストリクターと車高の影響で)クルマの動きは全然違う状態になっています。でもそれなりに僕たちも合わせられるようになっているし、エンジニアもチームもクルマの理解度が深まって、対応してクルマを合わせてくれているので、動きは違うけれど走りやすくて安心して走れます。シーズン終盤に向けて、引き出しは増えていると思っています。

熊倉淳一監督コメント

車高を8mmも上げなければならなくなった事と、98kgという車重が影響したと思われるトラブルが、公式練習中に出てしまい、思うように確認走行をすることができなかったにも関わらず、二人のドライバーがきっちりノー・アクシデント!でラップタイムを刻んでくれたお蔭でこの結果につながったと思います。

決勝直前の朝のフリー走行では、今までの経験を基にセッティング変更を試して車高UPに対応し、なんとか戦えるレベルにまでクルマを仕上げられました。トップスピードが伸びないような性能調整を受けているので、ラップタイムは速くても、コースがクリアでないとなかなか自分たちのペースで走れない事が今回のレースのネックになりました。ライバルの戦略を確認することはできませんが、FIA勢は燃料タンクを拡大して来ていることもあったので、最後のピットストップ時間を短くできたということでしょう。そこで前に出られてしまうと、トップスピードが遅いので抜き返せないんです。
ノー・トラブル!ノー・アクシデント!!を目標に完走した結果は、自分たちにとっては十分だったと思います。

重く苦しく長いレースでしたが、チーム一丸となって、有言実行することができました。次大会のハンディウエイトはマックスの100kgになりますが、車両性能をフルに発揮して戦い続けて行けば最終的に結果が付いてくるのではないかと思います。

ファンの皆様、猛暑の中、長時間のご声援ありがとうございました。