Brake

最高出力240馬力の走りを意図に即して、瞬時に減速させる制動力。

意のままに止まれる性能。無限がブレーキの開発において目指しているのは絶対的な制動力の向上のみではない。乗り手がペダルを踏み込めば踏み込んだ分、踏み込みを緩めれば緩めた分だけ、正確に反応を返すコントロールクオリティ。その両面の追求である。

そうした信条は「RR」の開発にも当然のごとく貫かれた。シビックTYPE Rにおいてもブレーキにはこだわりが尽くされ、それを表すのがフロントホイールの間から伺い見れるBrembo社製アルミ対向4ポットキャリパー。軽量ながら極めて高い剛性と信頼性を誇る逸品である。

「RR」はこのキャリパーを生かす形で構成部品を一新。無限が理想とするブレーキシステムとして創り上げた。まずフロントのローターには無限独自の「逆ベンチ形状」と呼ぶ断面形状を持つφ320mm大径ローターを採用。逆ベンチ形状とは外側の摺動面とハットの間が開いた形状で、そこから冷却風をローター内に取り入れることで冷却効率を高め熱による変形を少なくすると同時に、たとえ変形した際でもその向きを ペダルタッチが良好に保てる向きにコントロールする効果を持つ。標準ローターと比べ約10%の軽量化にも貢献するものである。

また、リアにはφ282mmのローターを備えているが、フロントローターとも同様に、表面と裏面に5本ずつ、深さ1mmのスリット加工を施している。このスリットは、高温によって炭化したブレーキパッドの表面を取り除いてパッドの効果を維持するとともに、パッドとローターの間に発生する高熱を効率よく排出させて耐フェード性を向上させる。スリットの位置を表面・裏面で違えているが、これは不快なブレーキジャダー(振動)を低減するための工夫である。ブレーキパッドは車両の前後重量配分などを踏まえ、フロント/リアそれぞれに最適な摩材を選定・調合。極めて高温でも炭化しにくく、低温時からも高い剛性感と優れたコントロール性能を発揮するものとした。

これら要の部位については、車両特性を踏まえつつ多彩な走行条件を再現できるダイナモテストを繰り返し、さらにサーキットでの過酷な実走試験を重ねることで練り上げられた。加えて、ブレーキを作動させるための神経と言うべきブレーキラインも仕様を変更。極細のステンレス鋼線を幾重にも撚り合わせることで、低い膨張率と高い柔軟性を両立させたミクロメッシュブレーキラインを採用。

これら一連のシステムにより高出力化した走りに見合う強力な制動力と極めてダイレクトなコントロール性能を獲得した。その上、走行風を積極的に活かす冷却対策もシビック TYPE R同様徹底。フロントバンパー一体のブレーキ用カーボンコンポジット製エアインテークダクトを装備。大型のエアインテークプレートとあわせ風を効率よくブレーキへ送り、極めて高い冷却効果を実現。高出力化した走りでも安心してサーキット周回を重ねられるシステムとしている。