Suspension

高度な荷重移動により安定した挙動。快適性も両立させた専用サスペンション。

人間の身体機能の延長。その究極としてスポーツカーを考える。単に絶対的な速さだけではなく、人の意のままになるパフォーマンスとそれがもたらす歓び。HondaがTYPE Rに対して一貫して求めてきた性能はそれであり、だからこそ車両の総合性能が問われるテクニカルサーキットで創られてきた。

無限が完成車を創造する上で目指していた速さも同じである。シビックTYPE Rという秀逸な素材を手にし、エンジンを鍛え、パワーの限界を上げる。それとともに「RR」には、車両の挙動を安定させ、そのポテンシャルを自在に引き出せる、無限が理想とするシャシー性能を吹き込んだ。旋回速度の向上が重要とされたシビックTYPE Rのサスペンションは、それまでのFF TYPE Rにない手法がとられている。

FF車で旋回性能を高めるには、全体のロール剛性を上げながら特にリアを極端に固め、フロントを相対的に柔軟にすることでフロントに荷重をかけ、リアの荷重を抜き回頭性を上げるという手法が常道である。

シビックTYPE Rもこれに則りつつ、さらに、縮み方向へは動きやすくして外輪をより強く路面に押し付けコーナリングフォースを高める一方、伸び方向についてはダンパーの効きを初期から立ち上がるようにし、内輪のジャッキアップを抑制。タイヤ接地圧を高め、トラクションを有効に使えるようにされている。

「RR」が目標にしたのは、より強大になったトラクションを最大限に活かすことは勿論、前後のバランスを高次元化することによってスムーズな荷重移動を創り出し、人の意に適う自然かつ安定した挙動を実現すること。もう一つは快適性との両立も図ることである。

そのために専用スプリングと専用ダンパーを開発した。スプリングはバネレートを一段と向上。フロントはシビックTYPE Rに対して117%、リアは113%高剛性化し、高荷重時の高減衰化を実現するとともに、車高を10mm下げる設定とあわせロール量を低減している。そして、シビックTYPE Rとは異なる個性を見せるのがダンパーの仕様。フロントは伸び方向の減衰力を高め、縮み方向は初期の減衰力をアップ。

しかしながらリアは伸び方向においてシビックTYPE Rよりもしなやかな設定とした。これらにより、コーナリング中、違和感のない荷重移動で運転にも余裕をもたらす安定した車両挙動と確かな接地感を生み、優れたライントレース性も発揮。またコーナー出口では早くからフロント両輪にトラクションがかけられ、素早い脱出を可能にする。

加えて、あらゆる状況でリアの突き上げ感が少なく、乗り味も快適さを増している。さらに、このダンパーの大きな特長として減衰力5段階調整機構がある。フロント/リアともに幅広いセッティングが可能。その精悍さが漲る威容から受ける印象とは違う一般道での心地よさも確保した。サーキット走行での圧倒的な性能を有しつつマルチな走りの才も持つ。「RR」のパフォーマンスはオンロードすべてを包み込む。